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2018年 01月 28日
ようやくコースに戻った私の闘志を打ち砕くように、海風がまともに打ち付けてくる。 “海岸線の風が収まっていればいいのですが・・・” 出発前に聞いたKさんの言葉である。横(西)から、時には正面(北)から。おまけに行く道は海岸線のアップダウンで、これだけの強風は相当の負担になる。しかし、もう後がない。とにかく走るしかないのだ。 歯を食いしばりながらインナーローにギアを落とした瞬間・・・・ガリガリッという音とともに、ペダルを踏む足にチェーンが外れる感触が走った。 (なんだ?!何が起こった?!)
(ロー側3枚が・・・全然使えないじゃないか!!)
ふと、先程のコンビニで自転車が強風で倒れたことを思い出した。あの時にRメカを直撃したに違いない。ガイドプレートがやや内側に向いているような気がするが、単にプレートが変形したのか、パンタグラフがダメージを受けているのか、取り付け部に影響が出ているのか・・・・目視した程度では判断がつかない。そして、デリケートな昨今のディレーラーを調整する知識は持ち合わせていない。
この先には、“壁”と噂される後半最大の難所、日の岬の激坂が待っている。インナーローなくして、そこを通過できるとは思えない。そもそも、そのために34TのスプロケとRメカを新調したのだ。それが使えない以上、もう走れない。ただでさえパンクでタイムロスしたというのに、これでは完走の可能性は限りなくゼロに近いではないか・・・。追い抜いていく参加者の姿も、ほとんどなくなっていた。絶望感に包まれ、私は道端で途方に暮れてしまった。まだ半分しか走っていないのに、もうダメなのか。またDNFなのか・・・・・・・・・・・・いやまて、それでいいのか?
(馬鹿野郎!!何のためにここまで走って来たんだ!!まだ昼じゃないか。20時までに帰ればいいんだ。最後まで諦めてたまるか!ペダルが踏めないわけじゃない。まだ走れる!!)
完走は困難かもしれない。しかし可能性はゼロではないのだ。私は日御碕に向け、渾身の力で再びペダルを踏み始めた。
強風に苦しめられながら、どうにか日の岬への分岐に到着。少し進むと、“壁”は私の前に立ちはだかった。この激坂を上るには、何としてもインナーローにチェーンを落とさなければならない。 (頼む、頼むから入ってくれ!!)ぺダルを踏む力を加減しながら、祈るような気持ちでシフトダウンする。カシャ、カシャ・・・という音とともに、何とか34Tに入ってくれたチェーン! (よし、これならなんとかなる!とにかく登るんだ!止まっちゃダメなんだ!) 相変わらずペースは遅いが、それでも登れる。しかし激坂とはいえ、勾配には緩急がある。少しでも緩くなったら一枚でもシフトアップすることで、リズムを崩さずに登ることができるのだが、坂の途中で変速すると、再びローに落とせる保証はない。スピードを維持するよりも、ペダリングのリズムが狂う事による消耗が辛く、歯がゆい。 通過チェック4:日の岬(参考タイム15:18)フォトコントロール 時刻は15:25。申告用の写真を撮っている若いライダーに声をかけると、彼らのスタート時刻は7:00とのこと。私が6:30スタート組であることを告げると、彼は気の毒そうな表情を浮かべた。 『多分、かなり頑張らないといけないですよ。』 その言葉に後押しされ、早々に来た道を引き返す。
私がかろうじて1:1のギア比で越えてきた坂道を、何人かのライダーが押し登っている。おそらくそこまでのローギアを装備していないのだろう。 (彼らが最終組の7:00スタートだとしても、まだここを押しているようでは・・・) しかし他人を心配する余裕はない。日の岬を後にした私は、海岸線に沿って延びるアップダウンの道を走り始めた。
小まめなシフトチェンジは体力の消耗を抑え、巡航速度を最大に保つことができる。ところがRメカが不調の今、思うようにコントロールできない。 坂道に差し掛かるとシフトダウンするが、ロー側3枚を残したまま、フロントをインナーに落とす。そのままでは足が余るので、一旦何枚かシフトアップしてから、徐々にロー側へ。急坂が近づくと、スプロケットを目視しながら全神経を集中して、最大ギアの34Tに落とし込む・・・・そして数回に一度は変速に失敗し、立ちゴケを食らうのだ。そんな事を、何度も何度も繰り返さなければならないのである。
これだけの操作がいかに煩わしく、消耗を強いられるか。さらに、海沿いに出てから相変わらず打ち続ける強風。そしてなにより・・・・終盤のステージであるこの海岸線の道は、私の予想を大きく裏切るものだった。
改めてコースの勾配図をご覧いただきたい。コース後半において、日の岬の激坂を終えた後は、海岸線のアップダウンがゴールまで続いている。この“海岸線のアップダウン”を、私は地元瀬戸内のイメージを浮かべていた。すなわち《うねりながら続く緩やかなアップダウン、登っては下りを繰り返す道を根気よく走り続けると、ゴールまで走り通せるはずだ・・・》
実際は大きく違っていた。1:1のギア比でなければ登れないような激坂が、小さいながらも次々と襲い掛かってくるのである。和歌山の海岸線が押しなべてそうなのかは知らないが、体力の消耗した後半にここまでやられるとたまったものではない。
(完全に騙された・・・このコース最大の難所は、黒沢でも日の岬でもなく、終盤に横たわるこの海岸線エリアだったのだ!!)
勿論ベテランランドヌールはコース図を見ただけで予想できたことであろうし、登りでヘロヘロの私をスイスイ追い越していく参加者もいるくらいだから、これは貧脚ライダーの言い訳かもしれない。いずれにせよ、それに気づいた頃の私にエネルギーはもう僅かしか残されていなかった。
PC2:白崎海洋公園(11:09~17:02)レシート取得orフォトコントロール PC2には17:12、かろうじて明るいうちに着くことができたが、すでに売店は締まっている。写真を撮るには撮ったが、ブルべカードに記された受付タイムは過ぎている。ルール上はこの時点でDNFなのかもしれないが、私はまだ走り切るつもりでいた。少なくとも規定の20:00までにゴールする希望だけは捨てていなかった。
もうほとんど参加者の姿は見かけなくなったが、先客に一組のカップルが。 『このコース、ホント、きついですねえ。』 カップルは苦しそうにこぼしたが、写真を撮り終えるとあっという間にその姿は見えなくなった。
ここから先はスタート地点まで、文字通り“帰るだけ”である。 紙地図はバックの中にあるし、GPS画面を拡大すれば残りコースの概略はわかる。しかし私はそんな気になれなかった。それを知るのが怖かったのだ。 気が付けばすでに真っ暗。コンビニも無い漁師町を抜け、対向車もこない県道を走り、ひたすら国道への合流ポイントを目指す。すでに参加者に追い越されることも皆無になっていた。
初めてこのコースをDNFした際、残りの道をショートカットして海南に戻ったのだが、確か海岸線の国道を上り詰めた先から、海南中心部の輝くネオンが見下ろせたはずだ。 しかし走れど走れど、道は内陸に向かっていく。 (まだだ、海南の明かりさえ見えれば、残り30分もあればゴールできる。もう少しで海南市に戻れるんだ。) しかし無情にも、目前に現れた標識には“有田市”の文字が。まだ有田を通過しなければならないのか・・・ (畜生!畜生!畜生!明かりは、マリーナシティーの明かりはまだか!まだなのか・・・?!)
ようやく海南市に入り、最後の力を振り絞って国道を北上するも、GPSの指し示すルートはさらに左へ迂回し、国道から外れた住宅街の方に延びている。自販機の横で立ち止まると、コースは急坂を超えて、どこまで続くかわからない闇の中へと延びている。
時計の針は・・・・19:30。その瞬間、私の中で何かが折れる音がした。
携帯電話でKさんに連絡を取った後、自販機の脇でへたり込む。本当は本部にDNFの連絡を入れなければならないのだが、もうそんな判断もできなくなっていた。半ば気を失った状態で、どのくらいへばっていたのかわからない。ようやく正気を取り戻し、フラフラでコースを辿る。ゴールまで目の前という幹線道に出て、遅ればせならが本部に連絡を入れて、私の3度目の挑戦は終わったのだった。 (この項、終り)
by james_y1964
| 2018-01-28 14:28
| シューペル・ランドヌールへの道
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Comments(3)
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by
shin
at 2018-05-16 14:13
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ジェームスさん、shinです。ずっと楽しみにして新しい記事を待っていますが、2・3・4月とアップされることなかったですね。もうないのかな。
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by
ジェームス吉田
at 2018-06-03 04:48
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shinさん、返信が遅れまして失礼しました!
いやー、なんというか・・・忙しすぎなのです(涙)。 全然乗ってないわけじゃなく、ブログネタもいくつかあるにはあるのですが・・・文章にするまとまった時間がなかなか取れません(と言いつつ、はや3か月)。 正直、参ってます(大泣)。
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by
shin
at 2018-06-07 23:50
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いやー、仕事が忙しいのはいい事ですよ。うちなんか閑古鳥が鳴いてて、今日は何しようか状態ですから。たまに覗きに来ますので、時間できたらアップしてください。できれば淡路島の時のように、また一緒に走りましょうね。
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