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2010年 01月 24日
はじめに
私にはバイブルと呼ぶべき本が二冊ある。 その一冊が、20代半ばで購入した古本『讃岐路(山陽教養シリーズ)』(山陽新聞社・昭和47年発行)。 高松および琴平へ通ずる八つの街道のフォトレポートといった内容で、讃岐旧街道散策の最高の入門書。昭和40年代の風景写真も大きな魅力で、中でも移築再建以前の朽ちかけた旧こんぴら大芝居(金丸座)のカラーグラビアは圧巻。 どこの古本屋で買ったかも忘れたが、この本を読んでから私はすっかり旧街道なるものにハマってしまう。おかげで女性とドライブしていても、『この道は古くは〇〇街道と呼ばれていてね、ほら、あっちに見える細い道が旧道で・・・』などとやる訳だからフラれ続けたのも無理はない。そんな私のウンチクに付き合ってくれた唯一の女性が妻なのだが、彼女が相当辛抱強い性格であるのを知ったのは結婚後しばらく経ってからの事である。 その本の中、本文の脇に載っていた“阿讃山地”についての解説文に、私の興味が大きく惹かれる一節があった。 『(前略)山地を越える峠は十六、そのうち人馬のみ通れる峠が六あり、もっとも有名な峠として大阪峠、清水峠、猪鼻峠(猪鼻越えともいう)などがある。』 東日本の方々の為に少しだけ脱線して、四国の地勢について触れておく事にしよう。 四国の中央には、日本百名山に名を連ねる石鎚山、剣山を抱えた四国山地が四県を分断する様に鎮座しており、更に香川県と徳島県は東西に伸びる讃岐山脈で遮られている。その徳島県側には四国三郎の異名を持つ一級河川、吉野川が讃岐山脈に沿うように西から東へと流れており、毎年夏の渇水次期になるとその貯水率が話題になる早明浦(さめうら)ダムは、その最上流部(高知県)に位置している。 『山地』という地理用語は大きな山塊を指し、『山脈』とはそれが細長く伸びた状態、という理解の仕方は間違っていないだろう。しかし『青い山脈』の影響かどうだか分からないが、山脈という語感には相当スケールの大きな響きがあり、四国山地のおまけの様に細長く盛り上がった讃岐山脈には分不相応な命名である気がしてならない。 更に“讃岐山脈”という呼び方ついても近年ネットで知った情報によれば『徳島(阿波)と香川(讃岐)の両県にまたがっているのだから“阿讃山脈”と呼ぶべきだろう。一方的に香川側に立って“讃岐山脈”と呼ぶのはよろしくない。』という徳島県側の意見もある様だ。 誠にごもっともで、『讃岐路』の件の記事でも“阿讃山地”という表記になっている。もっともそれが、この本を出版した山陽新聞社(岡山県)の公平中立な見地に拠るものかどうかは分からない。 そんなこんなで色々議論の余地はあるが、日本一小さい県のささやかなお国自慢として、本稿では“讃岐山脈”の呼称を使わせてもらう事にする。 本題に戻ろう。この“十六の峠”という言葉に、眠っていた私のサイクリストの血が騒いだ。 (阿讃の山々を越えるこれらの峠を、全て自転車で走破してやろうじゃないか!) 信州の峠や百名山を制覇する訳ではない。一六という峠の数も、目標としては丁度良い位ではないか。私は張り切って地図を開いたのだが、事はそう簡単に運ばなかった。その十六の峠が、どこにあるのかが確認できないのだ! 讃岐山脈の稜線は概ね香川・徳島の県境となっており、地図にもそれを越える峠道は幾つかある。『讃岐路』で紹介された3つの峠はその横綱格なのだが、それ以外の峠道がはっきりしない。道路地図では峠の名前まではろくに記載されていないし、そもそも十六も道が無い。二万五千図なら載っていそうだが、県境にまたがる地図を全て揃えるのももったいないし、買った後で地名が記載されていなければ尚更だ。とにかくまず、『阿讃をつなぐ十六峠』の一覧表でもあればよいのだが、そんな物を手に入れる方法を思いつかないまま、時間だけが過ぎていった。 その本に巡り会ったのは確か30代の終わり頃だったと思う。たまたま県立図書館を訪れた際、館内の検索用CPにダメでもともとと“阿讃の峠”と入力してヒットしたのだ。題名はそのものズバリ『阿讃の峠』(「峠の会」昭和46年発行)。この本が私の2冊目のバイブルとなる。 本と言っても、僅か67ページの小冊子。背中はボロボロで、おまけに持ち出し禁止。館内コピー機の使用料金はべらぼうに高かったが、それでも私は夢中でコピーを取った(画像はコピーのもの)。もともとは県の広報誌の連載記事をまとめたものらしく、巻末に「非売品」とあるものの300円という価格も併記されているので、自費出版の類かもしれない。本文に添えられた写真は全て白黒。 この本との出会いは衝撃だった。巻末に阿讃の峠の配置図と周辺図が載っていた事は大きな収穫だったが、私が驚かされたのはむしろ本文である。各峠にはそれぞれ2ページが割かれ、「峠の会」(現・香川峠の会)のメンバーによる短いエッセイと、大写しの峠(またはその周辺)の写真が掲載されているのだが、その文章・写真共に一級品なのである。 それもそのはず、当時20名だった峠の会の顔触れは“各方面のベテラン”(巻末掲載の四国新聞の記事より)で、野仏研究家、カメラマン、作家、随筆家、俳人、歌人、民族研究家、画家などなど。会長の古市寛氏は県の土木部次長(当時)で、この本の前に『讃岐の峠』という本を個人で発行されている。これ程の豪華メンバーで執筆されたこの本の内容が驚くほど濃い事も頷ける。 決して山岳圏ではない香川県だが、峠を愛する人々の思いが詰まったこの本は、同種の出版物の中でも群を抜いて上質の内容を誇っていると私は思う。特に巻頭の古市会長の序文は名文で、峠を愛するサイクリストは機会があれば一読をお勧めする。 巻末掲載の『阿讃の峠 位置図』(上)および各峠の周辺図(下)。 私はこれが欲しかったのだ。 さて、資料は揃った。あとは各峠を現代の二万五千図に照らし合わせ、自転車で走破するだけだ。が、それだけでは物足りない。そこで『毎回、讃岐側から峠を越えたところにある阿波側の温泉(日帰り入浴施設)でひと汗流す』事にした。もとより火山帯の無い四国に温泉が少ないのは承知だが、それでもボーリングで掘った新興温泉や古くからある冷泉だったら、まあそれなりにある。こうして私の『阿讃の峠を制覇する』という長年の夢を実現できるめどが立った。何年かかるか分からないが、一つ一つ走破し、峠と温泉のレポートを残していこうと思う。 (本編へ続く) 温泉施設を調べる資料はこの本。本屋をハシゴしたが、『各峠を下った所に都合よくある温泉』を網羅しているのはこの一冊だけだった。
by james_y1964
| 2010-01-24 11:42
| 『阿讃の峠と温泉と』
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Comments(12)
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at 2010-01-25 10:00
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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りかの配偶者
at 2010-01-25 20:52
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こういうの、もの凄く大事な事だと思ってます。
横浜を徘徊するのにも開港当時のことを知ってれば百倍面白いです。開港して西欧文化が流入した地である横浜は「日本で初めて」の多い地です。新聞、下水道、ビール工場、アイスクリーム、レンガ工場、競馬… そういうのを知ってると何かと面白いのです。 鎌倉に行くにしたって頼朝・義経のこと、足利尊氏・新田義貞の事を知ってる知らないでは大きな違いなのです。 メジャーな事でなくといいのです。自分が関心もっていることが重要です。義務的じゃ苦痛ですからね。 長野だって武田信玄を知ってるか否かで大きな違いですよね。 こういう楽しみ方、大いに賛同します、共感します。
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おぉ!面白そうな企画ですね。まずは、鵜峠と御所温泉&たらいうどんでしょうか(笑)。16ある峠のいくつかでもジェームスさんとご一緒できるといいなー。
猪鼻峠は、大学サイクリング部に入って一ヶ月半くらいのときに、Vルートという松山→高知→善通寺→松山を走る、非公式ロングライドを走ったときに越えました。15~16時間くらい走りっぱなしでしたが、若かったんですね~。懐かしいです~。
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k
at 2010-01-26 07:07
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「故事来歴を知ることなくサイクリングするのが好きだ」、という先輩サイクリストがいて、それから一層走り屋?に向いた私なので、「心象、心描、心(笑?)ラン」に憧れます。讃岐紀行が待ち遠しい!ジェームスさん。
要らぬことですが例の手袋、浅間温泉YHで会った先輩サイクリストから、 「こけて手の平を擦りむくと、そこからサイクリング続けられへんよー」と教わり、それ以来必ずしています。でも「頭打ったら・・・」とは言わなかったので、歩く、日常生活と同じなんやーと、当時アメリカンサイクリストの大勢が被っていたヘルでも、 都合よく解釈し続けてきたようです。石で頭打っても死ななければ先へ行けると今でも思ってますが、 要は本人の人生における「バランス感(損得勘定)」でしょうか。(^_-)
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R531
at 2010-01-28 08:14
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今は鎌倉に住んでいますが、生まれが高松なので、大変親しみを感じています。実際物心つく前に関東に引越したのですが、夏休みには祖父母宅へ遊びに行っており、精神的故郷として君臨してます。リポート楽しみに待っております。
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せともの
at 2010-01-29 23:24
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峠本のメッカ 「峠の向こうへ」はご存知だとは思いますが、もしやと、のぞいてみたら『阿讃の峠』, 『讃岐の峠』 2つともちゃんと載っていました、
jamesさんが、教えたのかしら
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james_y1964 at 2010-01-31 08:11
てっちょれろさん、初めまして・・・ってアンタ、『プロジェクト究極のランドナー』に登場した友人A君じゃないか!(説明、わざとらしー)
えー、その節はお世話になりました。またいろいろ頼むけん、すまんけんどまたたのむわなー。ほんだら、新年会よろしゅー。 おもいっきり私信ですんません。
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ジェームス吉田
at 2010-01-31 08:20
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りかの配偶者さん、ご賛同ありがとうございます。
仰られる通り、歴史的背景を知っているかどうかだけで、目に入る風景の色まで変わってくるんから不思議ですよね。(ちなみに私の妻はそいうのにま~~~~ったく興味が無くて話が合わない・涙)。 もっとも私が目覚めたのはそう昔ではありません。Uターンしてから、にわかに郷土史に目覚めたのです。昔はただただ、走ってばかりのサイクリングでした。 横浜には歴史的な遺構がたくさんある事と思います。いつかぜひ散策に訪れたいと思います。その折にはぜひガイドして下さいね!(勉強しとかねば・・・)
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ジェームス吉田
at 2010-01-31 08:29
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さんつあ~ひ~ろ~さん、ご返事が遅れて大変失礼しました。
お待たせしました、これが以前言ってた『大ネタ』なのです! >鵜峠と御所温泉&たらいうどんでしょうか 鵜峠(うのたお)に関しては、それ以外のプランニングは考えられないでしょう(笑)。 しかし一昨年の暮れにひ~ろ~さんがここを越えて帰省された折、『しまった、先を越された!』と考えた私の気持ちがお分かり頂けたと思います(笑)。次回帰省の折りにはぜひご一緒したいものです。 四国ブロックラリーに参加した際に『Vルート』の言葉は耳にした事があります。中身はよく知らなかったのですが・・・そんなハードなコースだったとは!ひ~ろ~さんの健脚のルーツを垣間見たような・・・。 今の私には、絶対無理ですなあ(笑)。
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ジェームス吉田
at 2010-01-31 08:38
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kさん、おはようございます。ご返事が遅れて大変失礼しました。
>「故事来歴を知ることなくサイクリングするのが好きだ」 かつての私もそうだったのですが(汗)。 ここのところ、自転車が直らないので全く走っておりません。直れば何にも考えずに、ひたすら一日中走りまくろうと思ってます。『濃い』サイクリングはストレスを発散し切ってから、じっくり腰を据えて取りかかろうと思います。讃岐紀行、乞うご期待下さい! 手袋も履くべきとは思うんですよねー、ホントは・・・。しかし履いたらせっかくの革のバーテープのグリップ感を感じる事が出来なくなってもったいない気がして。うーん、理屈の上では履くべきなのでしょうけど。 理論理論と言いながら、大分好みに左右されてはおります。
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ジェームス吉田
at 2010-01-31 08:44
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R531さん、おはようございます。ご返事が遅れて大変失礼しました。
生まれ故郷が高松との事、本ブログが少しでも故郷の香りを鎌倉に届ける事のお手伝いになれば嬉しく思います。私は香川県の東端在住ですが、今回紹介した讃岐旧街道は(当然ながら)高松を目指すものが多く、旧道を辿るサイクリングもそのうち実現しようと思っています。 “超”ローカルレポートですが、ぜひ読んでやってくださいね!これからもよろしくお願いします!
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ジェームス吉田
at 2010-01-31 08:55
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せとものさん、おはようございます&いらっしゃいませ!
『峠のむこうへ』(あれ・平仮名でしたっけ?)、私もブックマークに入れてます。物凄い蔵書、じゃなかった、読書量ですよね!峠への愛を感じます。もっとも管理人さんは既に自転車の世界をフェードアウトされてる様ですが・・・。 >jamesさんが、教えたのかしら えー、自慢する訳ではないのですが、実は私がメールで紹介しました。何せあの本に出会った事が嬉しくて嬉しくて、峠を愛する管理人さんに何としても読んで欲しくなったのです。後日HPで紹介された際にはかなりの高評価を与えて下さった事が、自分の事の様に喜ばしく思いました。『讃岐の峠』は巻末に触れられていましたので、そこから参照されたのかもしれません。 それ以後も私の知らない香川の峠本をHPで紹介されており、阿讃の峠レポート実行前に読んでおかねば、と思っております。
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