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2011年 01月 10日
ご近所の峠・東讃陰陽連絡道(後)
案内板にあった神社の隋身門(寺院の山門にあたるもの)はすぐに現れた。大きさは中ぐらいだが、中々立派な造りは風格すら漂っている。 『なるほど、案内板を設置するだけの事はあるなあ。』 『けど相棒、ちょっと立派過ぎる気がしないでもないかい?何となく周りの風景と違和感があると言うか・・・』 ツヨシの疑問は、門の脇に設けられた説明版を読むとすぐに解けた。≪当隋身門は、小村には不相応な豪華なもので・・・≫と始まる説明文によると、当時この門を設置する為に相当多くの浄財が集められたらしい。その背景にどんな事情があったのか、そこまでは記されていないが、地元の深い信仰に支えられていた事は間違いない。幕末に発起されて明治初年に完成したという事だから、さほど古さを感じさせないのも頷ける。 しかし私が気になったのは説明文の≪道路を敷設する為に、この門を西側から現在の位置に移設した≫という一節だった。門を背にして西方向を見れば、30メートル程先に鳥居が見えている。そこまで行って振り返ると、鳥居の両側に不自然な空間がある。 『きっとここが元々の門の位置だったに違いない。』 『しかしなあ・・・見てみろよ。いいのか?神社の境内にあんなものがあって。』 ツヨシが言っているのは、鳥居の内側、社殿に向かって左側にある牛舎の事である。堆肥の匂いも芳しいその建物の他にも、農協の倉庫や自治会の集会場など、かつての境内は様々に活用されていた。雑草に覆われてはいるが、照明施設が付けられた運動広場の様なスペースもある。 右手に集会場が建てたれている。 『きっと門を移設した後に建てられたんだろう。しかしそうは言っても神域に牛小屋とは如何なものかなあ。』 鳥居から内側は神域と考える私は、先程からサドルから腰を下ろしている。丁度参拝に来られた地元と思しき家族連れの方々に尋ねてみると、果たしてかつて隋身門は私が推測した通りの場所にあったとの事。年配のご主人曰く、 『私が子供の頃は境内には何も無くてね、よくここで遊んだよ。東京オリンピックの頃は体育協会の指導員をやってて、私はバレーボールの指導に回っていた。あそこにコートを設けてね、毎晩のように青年団の人達と練習していたなあ。』 今は草ぼうぼうになったかつてのバレーボールコートを指しながら、懐かしそうに話してくれたのだった。バレーボールの盛んな香川県の土地柄は、その頃に育まれたのだろう。今は静かな神社だが、昭和に入ってからもずっと地元の人達の社交の場として、大きな役割を果たしてきたに違いない。 ご主人にお礼を言って、八剣神社を後にする。坂を下りながらツヨシが小さく呟いた。 『地元農業の発展の為なら、あそこの神様は境内に牛小屋が建てられても案外怒ったりしなかったかもしれないな。』 長尾街道に出てしばらく走ると、次の峠への分岐点にはすぐに着いた。近くには旧大川町役場や警察所、農協の支所などが集まっており、この辺りが旧町の中心部になっている。ゆるやかな坂道を登れば、目の前の山の中腹に立派なトンネルが現れた。昭和41年竣工の柴谷隧道である。 トンネル上に見えるガードレールは・・・ 『よし、トンネルをくぐって旧津田町に戻るぞ。』 『あれれ?相棒、旧道の峠道へは行かないのか?』 トンネルの上には、白いガードレールが山裾を斜めに上っている。 『いや、今回は素直にトンネルを抜けよう。実はあの道は何年か前に車で走った事があるのだ。ところが凄く狭い上に、ゴルフ場の敷地の脇を通る風情の無い道で、おまけに下り切った所はなぜかいきなり住宅密集地だったりして、とにかく自転車で走って面白くないのだよ。だからパス。』 『ゴルフ場って・・・そりゃ道を間違えたんじゃないか?』 そんな気もするが、かといって今更正しい旧峠道を探すのも面倒だ。というのが、そもそもこの山を抜ける為の古道というものがあったのかどうかが疑わしいからである。トンネルを掘る技術の無かった昔に、わざわざピークを越えるしかないルートに街道を設ける必然性が感じられない。が、これは私の想像の世界であって、きちんと郷土史を調べた訳ではない。トンネル以前の歴史については今後の宿題としよう。 いずれゆっくり探訪してみたい。 短いトンネルを出てすぐ左手に、洒落たイタリアンレストランがある。 『どうだい相棒、たまには奥さんと一緒にこんなお洒落なレストランでディナーでも?』 『それは私も常々考えているのだが、生憎とダメなんだ。』 『え?どうして?』 『我が妻を誘っても“勿体ないわよ、そんなお金があったら子供達と一緒にファミリーレストランで食事した方が経済的だし”・・・なんて言うばっかりで、ちっとも私の気持ちを分かってくれないんだ!女性は子供が生まれると、みんなああなるのかね。だいたい女って奴は・・・』 『俺に文句を言われても・・・おっ!前を見てみろよ。』 ツヨシの声で顔を上げると、目の前に瀬戸の海が広がっている。それまでの田園風景からがらりと変わるロケーションは、ちょっとしたサプライズである。 『これはなかなかいいぞ。恋人とサイクリングする時は、長尾街道からこのトンネルを抜けて、さっきのイタリアンレストランでランチ、っていうコースはどうだ。』 『取り着き地点を一つ間違えて相地峠に行ってしまったら、下った所がラブホテルだぞ。一歩間違えたら気まずい事になる。』 『要下見、って事か。』 しょうもない話をしながら坂を下るうちに、腹が減って来た。そう言えばまだ昼食を取っていない。 『国道を左に行った所に、かえるのへそというラーメン屋がある。そこでニンニクラーメンを食べよう。』 『美味いのか、その店は。』 『うーん、どちらかというとギトギト系でな。しかし何年かに一度、無性に食べたくなる時があるのだ。』 『全然参考にならないレビューだなあ。』 しかしお目当ての店は本日休業。まだ正月三が日である事をすっかり忘れていたのである。迫る雨雲から逃げるように、空腹のまま全力疾走で帰路に着いたのであった。 (この項、終り) 1月10日加筆//本日かえるのへそを訪れてみると、入り口に『貸し物件』の表示がありました。どうやら昨年から既に閉店していた模様。30年以上に渡って津田の国道脇でその味を守って来た老舗が閉店した事は、少なからずショックでした。合掌。
by james_y1964
| 2011-01-10 09:33
| 『足の向くまま同行二輪』
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Comments(12)
ツヨシ君もジェームスさんも空腹のポタでしたね。
津田駅からうどんのお誘いではありませんが、ツヨシ君も満腹になるこんなツーリングはいかがでしょうか。道の駅神山から電話しましょうか(笑)。 http://latlonglab.yahoo.co.jp/route/watch?id=937bc690e9f9c4c38ee2f4b27bdd72a5 土須峠に旭丸峠、そして一部区間ですが剣山スーパー林道も堪能できます。観月茶屋での「西サ連らしくない」食事もいいですよ~(笑)
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ジェームス吉田
at 2011-01-10 16:54
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さんつあ~ひ~ろ~さん、津田駅にお越しの際は是非(笑)。
それはともかく、素敵なコースの提案、ありがとうございます!このエリアは以前から走ってみたいと思っていたのですが、漠然としたイメージだけではコースが組めず、実現に至りませんでした。今回頂いた情報で、具体的なコース取りを見られた事、感謝に堪えません!しかしなかなかハードそうだな、こりゃ(汗)。日帰り?それとも途中でテント泊?(まさか、ね) ・・・で、何時行きますか?(笑)まさか今、道の駅神山からでは・・・(笑)?!
こんにちは。
来ましたね地元シリーズ。かえるのへそは気になりながらも34 年行かず終いでした。 ありがたいことにお正月から忙しくさせていただいていて、吉田 さんのブログをゆっくり読む時間がありません。でも連休が終わ るといつも落ち着くので、明日からじっくり3回は読ませていた だきますよ。
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ジェームス吉田
at 2011-01-10 20:09
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カワイ店長、久々の地元ネタでございます(笑)。かえるのへそは残念でしたが、かく言う私も、この30年間で2回しか行ってないので偉そうな事は言えません。
お店の前を車で通る時、店長のお姿をお見かけする事も有ります。お忙しいでしょうけど、お仕事頑張って下さいね!店長のブログも欠かさず拝見しております。更新は楽しみですが、お仕事優先でくれぐれも無理無さらずに!
遅くなりましたが、明けましておめでとうございますm(__)m。
コメントありがとうございますm(__)m。 久しぶりに (すみません)拝見しましたが、様々な事に造詣が深く、文章も面白く、尊敬しますm(__)m。 サドルバッグサポーターも素晴らしいですね。しかし何よりもツヨシ君のフル装備は本当にカッコ良いですね!僕も一昨年アトランティスをフル装備改造しました。 トーエイキャンピングはバーレストは古いダイヤコンペ(日本)、チューブはレイノルズ(イギリス)ですが、タイヤチューブ、ラグやクラウンまで持ち込みフレンチです。否、ステムはトーエイプロジェクト2000と同タイプが好きなので、それをオーダーしました。ジェームス吉田さん程アーレンキー狂(笑)ではありませんのでm(__)m。 ツヨシ君のお嫁さんが来るのを楽しみにしていますm(__)m。
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あ~る
at 2011-01-12 09:43
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このコースにうどん店巡りを組み合わせると、次回讃岐うどんミーティングのコースになりませんかね?
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ジェームス吉田
at 2011-01-12 21:53
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りかの配偶者さん、こんばんは。お返事遅れて失礼しました!
>かえるのへそ どういう訳か、意外にも地元住民ですら案外行ったことが無い方も多い様で・・・。(いつでも行ける場所にあったからかなあ?)しかしもう行けません(涙)。 >もっと読みたいです。 ススス、スイマセンです(汗)。嬉しさと同時に大恐縮!けど、たかだか2時間程度のポタリングをここまで引っ張りましたからご容赦を(笑)。また休みを見つけて、次回こそ遠出したいのですが・・・。
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ジェームス吉田
at 2011-01-12 22:00
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大長さん、改めましておめでとございます!今年は何としてもTOMに参加するつもりです。今年こそオブジェを・・・(笑)。
おもいっきり褒めて頂き、もう大恐縮でございますー! 今回のTOEIキャンピングも、思いっきりおフランスですね。夏にはフル装備でキャンプですか!いいなー、いいなー。私もツヨシとキャンプに行きたいのですが・・・夏はお仕事が最繁忙期なのでキビシイのです。ううう。 今年のTOMはツヨシの嫁さん、流麗可憐号で行こうかな?(間に合うのか?!)
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ジェームス吉田
at 2011-01-12 22:04
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あ~るさん、こんばんはー。
>このコースにうどん店巡り う、う、う・・・どーでしょう?というのが・・・コース上に美味いうどん屋が無いのでは(笑)。あ、けどセルフ店が津田の松原と津田SAにありましたね。前者はまだ行ったことがないですが。もちょと研究しときますー!
日本の神様・仏様は 諸外国のそれと較べて 非常に
寛容で 大らか なので好きです。(笑
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ジェームス吉田
at 2011-01-15 20:29
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